トマトの作業の中でこれが1番重要な仕事といってもいいでしょう。
きっちり消毒しないとその後の1年間悩まされ続けることになります。
大変だけど大切な作業です。

土壌消毒って何?

作物を土で育てるには「土」の中にいる病原菌を減らすことが重要なの。ある作物を作るとそれを好む「微生物」(細菌)が極端に増えたり、周りから集まってくるの。
善玉菌もいるけどトマトにとっては悪い影響を与える悪玉菌も増えるの。土の中ではその比率(バランス)が重要でそれが崩れると「連作障害」という形になって現れてくるの。
特に施設栽培は「畑」のように移動することが出来ないから悪い「微生物」(細菌)を減らすためにどの施設農家も知恵を絞って努力しているのよ。

えっ!
土の中にいるのはミミズとか以外にも何かいるの?

そう。人間の目には見えない微生物」(細菌)がいるのよ。

それがトマトを食べちゃうの?

確かに虫の幼虫なんかはトマトの実や葉を食べて害を及ぼすわ。
でもそれよりももっと危害を及ぼすのが悪い「微生物」や「根」に危害を与える「センチュウ類」なの。

また新しい名前が出てきた。
「センチュウ」って?

土の中には色んな「センチュウ類」が住んでいるのよ。
その中でもトマトに害を与える「ネコブセンチュウ」は大敵なの。

「ネコブセンチュウ」?
漢字で書くと線虫だよね。
根にコブを作る線虫のこと?

そのとおり。名前の通りでわかりやすいわね。
「ネコブセンチュウ」は根の先の導管から侵入して中に卵を産み付けて爆発的に増殖するの。すると根が膨れ上がって「コブ」がいっぱいできるの。するとトマトの根は「水分」や「養分」をうまく吸えなくなって葉が萎れたり実が大きくならなくなったり、成長を著しく阻害されて最悪、枯れてしまうのよ。

なにそれっ!
とんでもない生き物だね。
防ぐ方法はないの?

簡単なのは「同じ場所で作らないこと」

でも施設栽培は「移動」できないんじゃ?

そうなの。
トマト以外では「甘藷」なんかにも「サツマイモネコブセンチュウ」っていうのが害を及ぼすけど「畑」なら違う「畑」に移動できたり違う作物を作って「輪作」することによって密度を減らすことができるわ。
だけど雨や虫に弱いトマトは施設内で作るのが主流だから移動することが出来ない。
そこで「土壌消毒」が必要なの。

なるほど。
いつもながら恐れ入ります。

農家の人たちは努力しているのよ。

で、具体的にどうすれば防ぐことが出来るの?

方法は色々あるわ。
薬品を使ったり熱湯を使ったり細いノズルでスチームを地下に注入したり夏の暑い陽射しを使ったり、微生物の力を借りたり、糖蜜を流し込んだりエタノールを使ったり。

えっ、そんなにあるの?
なんでそんなにあるの?

それはね、圃場の場所や作る作物、消毒する季節や対費用効果などによってメリット、デメリットがあるからよ。

へぇー。
なんだかわからないけど、農家の人は色々と研究してるんだね。
あまがいさんのトマトの圃場ではどの方法を使ってるの?

園主さんの話では「土壌還元消毒」というのを毎年やっているらしいわ。

なんだか難しい名前だね。
どんな消毒方法なの?

「還元」とは土壌を酸欠状態にして好気性微生物を減らし嫌気性微生物を一時的に増やすの。
具体的には米ぬか・ふすま・糖蜜など好気性微生物が好む有機物を圃場にすき込んだり流し込むのよ。
皮膜を上からかけて水をチューブで十分に潅水してから20日くらいすると好気性微生物が爆発的に増えるわ。でも被膜があるので酸欠状態に弱い好気性微生物は死滅するの。
多くの病原菌は「好気性微生物」なので結果として病原菌が減るのよ。酸欠状態の中では嫌気性微生物が好気性微生物にとってかわり活発に働き始めるわ。嫌気性微生物が有機物を分解するときに出来る副産物の「有機酸」やその中でも「酢酸」はトマトの重要病害である「萎凋病菌」や「フザリウム菌」、そして「センチュウ」を死滅させる働きがあることが研究機関により証明されているのよ。


うわぁ~~。
よくわかんないけど大変なことはわかったよ。
トマトを施設で作るのって大変なんだね。
農家の人は苦労してるんだね。

おいしいトマトを作るための第一歩が「土壌消毒」なのよ。
トマトに限ったことではないけど農家の人は頑張って美味しい作物を作るためにみんな努力しているわ。

ふだん何気なく食べてるけど、農家の人に感謝しなくちゃね。

そうそう。
それがわかってくれただけでも説明して良かったわ。

僕もひとつ勉強になりました。
ほんと、いつもありがとう♪

いいえ。どういたしまして♪
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